『ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ』 現実とはヴァーチャルとは生きるとは


評価:★★★★★

毎度ですがこのブログは ネタバレ しています。
マザーズ・ロザリオ』は傑作なので是非ともまず原作を読んでほしいです!


SAOも7巻まで読みました。ライトノベルを7巻まで読んだのもかなり久しぶりですね。SAOは1巻が圧倒的に素晴らしくて、、、、そのあとも面白くて楽しみに読んだりアニメ観たりしていたのですけれど、でも、この『マザーズ・ロザリオ』はとてもグッときました。
まあ、シンプルな話でよくある陳腐な話と言われたらそうかもしれないです。少なくともサバイバルで生き残った少年とこの日本で人を殺してしまった少女が出会うという『ファントム・バレット』のオリジナリティには勝てないと思います。でもね、、理屈じゃないんだよなぁ(涙)アスナとユウキの最後の会話、号泣しながら読んでました。

「でも……でもね……ようやく、答えが……見つかった、気がするよ……。意味、なんて……なくても……生きてて、いいんだ……って……。だって……最後の、瞬間が、こんなにも……満たされて……いるんだから……。こんなに……たくさんの人に……囲まれて……大好きな人の、腕の中で……旅を、終えられるんだから…………」

p286

うううううっ、、、素晴らしい。


終末治療と仮想世界
スリーピングナイツの会話やキリトの言動を注意深く読んでいればユウキのおかれた状況はわりと早い段階から推測できると思います。そしてこのテーマは仮想世界で現実と同じように生きられる、そしてその技術が確立された初期の段階の時代を描いてるSAOではある意味当然扱われるべきテーマなような気がします。

以前に書いた記事に人生の終え方について書いた記事がありました。

もし自分がガンになって「あともって半年です」と言われたらどうしますか?

絶望するでしょう。間違いなく。しかし、その絶望を超えて決断しなければいけなくなるときがあります。それは残りの人生を何にどう使うか?です。僕の知っている選択肢はこの二つです。

1.望みをもって抗ガン剤などで治療を施し、病気と闘う。

2.最善の治療を断って、残りの人生をできるだけ好きなように生きる。

『最高の人生の見つけ方』 2007年 - Second Wind Blue ~セカンドウインドブルー~



『最高の人生の見つけ方』 2007年 - Second Wind Blue ~セカンドウインドブルー~

2の生き方を選んでいけたらなというのが私の思いです。それは1の生き方が激しい苦痛を伴う非常に厳しい戦いを強いられるからです。私たちの現実は1つだけなのですから向き合い方は決断しなければなりません。
しかし、ヴァーチャルの世界に五感をフルダイブできる世界では病気と闘いながらもう一つの現実で走ったり美味しいご飯を食べたり恋をしたり友達を作ったりできる可能性もあるのです。
そんな世界がはやくきたらいいなあと思う@悠弥です。昔『serial experiments lain』を見てるときそんなこと思ってましたね。

しかし、そんなQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の究極みたいな世界でも別れは訪れるし、人は涙するんですよね。命は変わらず尊いのだと。
ユウキは本当に、本当に幸せだったのではないでしょうか。

・こちらの世界とあちらの世界
SAOの1巻、そしてSAOの主題は「仮想の世界は現実になりえるか」だと認識しています。キリトやアスナたちがネットゲームに閉じ込められてしまい、そしてそこで死ねば本当に死ぬ。そこで永遠に暮らせと強制させられてしまいます。そういった特殊な環境だとそこが現実にならざるを得ない。ゲームであっても遊びではない(by茅場晶彦)ということです。『アインクラッド』はだからキリトが病院で目覚めたときに閉じ込められた時と同じような恐怖がありました。

アインクラッド』のキリトたちは望まざるサバイバルを強制させられました。しかし、『マザーズ・ロザリオ』ではアスナは自由にログアウトできるプレイヤーであるのに対しユウキはヴァーチャルな世界がほぼ全てのプレイヤーです。一方は選択できるのに対しもう一方は選択が事実上できない。悲劇はこういう差から生まれるものですが……ユウキの幸運は見つけた相手が過去に「閉じ込められた」経験を持っていてユイというヴァーチャルでしか生きられない娘(凄い愛情だよ!!)を持っているアスナであったという点です。本当に奇跡みたいなものです。ヴァーチャルの世界とリアルワールドがどんどんシームレスになっていくのを感じました。現国の先生がデバイスを通してヴァーチャル世界から授業を受けているユウキに音読をさせたの、同じクラスに居合わせた人たちは一生忘れないだろうな……



つらつらと書いてしまった。他にはアスナの視点で話が進んでいたのでアスナの人物像がよりクリアになったこととか。シノンでてこなかったなあ(泣)とか思いました笑